なぜLEDデバッグシールドが必要なのか
組み込み開発において、最も基本的でありながら最も頼りになるデバッグ手法、それが 「LED点滅による状態確認」 です。
シリアル通信やデバッガが使える環境でも、「今、このピンがHIGHなのか?」「このタイミングで出力されているか?」を瞬時に把握するには、LEDに勝るものはありません。
しかし、毎回ブレッドボードに抵抗とLEDを配線するのは手間がかかります。
- ジャンパ線が絡まる
- 接触不良で点灯しないことがある
- 複数ピンを同時に確認したい時に配線地獄になる
そこで、Arduino UNO専用のLEDデバッグシールド を設計・製作しました。
そこで、Arduino UNO専用のLEDデバッグシールド を設計・製作しました。
Arduino UNO R4に装着したLEDシールド
このシールドで実現できること
🔍 全ピンの状態を一目で確認
Arduino UNOの デジタルピン(D0〜D13) および アナログピン(A0〜A5) すべてにLEDが接続されています。
プログラム実行中に「どのピンがHIGHで、どのピンがLOWか」を瞬時に把握できます。これは、以下のような場面で威力を発揮します:
- I2C/SPIなどの通信デバッグ: クロック信号やデータ線の動作確認
- PWM制御の確認: デューティ比に応じたLEDの明るさ変化で視覚的に検証
- 複数ピンの同時制御: マルチプレクサ動作やパラレル出力の確認
🔧 選択的なピン無効化機能
「このピンはシリアル通信で使うからLEDは要らない」というケースに対応するため、各LEDの手前に カット可能なブリッジ(ジャンパ) を配置しています。
- 不要なピンはカッターで切断してLEDを無効化
- 必要に応じて再ハンダで復活も可能
これにより、用途に応じたカスタマイズが可能です。
Arduino UNO R4対応について
従来のArduino UNO R3はもちろん、Arduino UNO R4 Minima / WiFi にも完全対応しています。
R4シリーズはルネサスの32bitマイコン(RA4M1)を搭載し、処理能力が大幅に向上していますが、ピン配置は従来のUNOと互換性があるため、このシールドをそのまま使用できます。
回路設計:シンプルさの中の工夫
以下が設計した回路図です。
Arduino LEDシールド回路図
回路の構成
基本的な構成は非常にシンプルです:
- 各ピンに直列抵抗(1kΩ)+ LED(緑色)
- カット可能なブリッジ(ジャンパパターン)
- スタッキングコネクタ経由でArduinoと接続
電流制限抵抗の選定
Arduino UNOの各ピンは最大 40mA まで出力可能ですが、推奨値は 20mA です。また、全ピンの合計電流は200mA以下 に抑える必要があります。
使用するLEDの順方向電圧を Vf = 2.0V と仮定すると:
I = (5V - 2.0V) / 1000Ω = 3mA
全ピン(約20本)が同時にONになった場合でも:
合計電流 = 3mA × 20 = 60mA
これは十分に安全マージンを確保した設計です。視認性も十分で、Arduino本体への負荷も最小限に抑えています。
基板レイアウト
基板設計は KiCad を使用し、Arduinoシールド用のテンプレートをベースに作成しました。
Arduino LEDシールド基板レイアウト
- 2層基板 で設計(コスト削減)
- 表面実装部品(SMD) を使用(手実装の手間を削減)
- シルク印刷 でピン番号を明記(視認性向上)
JLCPCBでのアセンブリ発注
今回の基板製作は JLCPCB のアセンブリサービスを利用しました。
発注内容
- 基板枚数: 30枚
- アセンブリ: LED・抵抗を実装済み
- 基板代: 12.2ドル
- アセンブリ代(部品費用含む): 23.67ドル
- 合計: 約36ドル(1枚あたり約1.2ドル)
アセンブリサービスのメリット
同じ部品を大量に使う場合、JLCPCBのアセンブリは非常にコストパフォーマンスに優れています:
| 項目 | 自分で実装 | JLCPCBアセンブリ |
|---|---|---|
| 部品調達 | 秋月・千石等で購入 | JLCPCBの在庫から自動 |
| 実装時間 | 30枚 × 20個 = 600個分の手ハンダ | ゼロ(機械実装) |
| 品質 | バラつきあり | 均一(リフロー炉使用) |
| コスト | 部品代 + 時給換算 | 1枚1.2ドル |
特に 表面実装の小型部品 は手ハンダが難しいため、アセンブリサービスの恩恵が大きいです。
実際に届いた基板
部品実装済みArduino LEDシールド基板
部品実装済みArduino LEDシールド基板
抵抗とLEDがしっかりと実装された状態で届きます。あとは スタッキングコネクタ をハンダ付けするだけで完成です。
Arduino UNO R4 Minimaに装着した状態
スタッキングコネクタを使用することで、以下のメリットがあります:
- 他のシールドとの重ね使いが可能
- ジャンパ線での信号取り出しが容易
- Arduinoのピンに直接アクセス可能
動作検証:全ピン点灯テスト
実際にArduino UNO R4 Minimaに装着して動作確認を行いました。
テストプログラム
全ピンを順番に点灯させる簡単なテストコードです:
void setup() {
// デジタルピン D0〜D13を出力に設定
for(int i = 0; i <= 13; i++) {
pinMode(i, OUTPUT);
}
// アナログピン A0〜A5を出力に設定
for(int i = A0; i <= A5; i++) {
pinMode(i, OUTPUT);
}
}
void loop() {
// デジタルピンを順番に点灯
for(int i = 0; i <= 13; i++) {
digitalWrite(i, HIGH);
delay(100);
digitalWrite(i, LOW);
}
// アナログピンを順番に点灯
for(int i = A0; i <= A5; i++) {
digitalWrite(i, HIGH);
delay(100);
digitalWrite(i, LOW);
}
}
動作確認結果
- ✅ 全ピンのLEDが正常に点灯
- ✅ 緑色LEDの視認性が良好
- ✅ Arduino本体への負荷も問題なし
- ✅ スタッキングコネクタ経由での信号伝達も正常
オープンソース・技術資料
このLEDシールドの設計データは オープンソース として公開しています。
KiCad回路図・基板データ・ガーバーファイル・BOM・CPL・サンプルコード
公開内容
- KiCad回路図・基板データ: 自由に改造・カスタマイズ可能
- ガーバーファイル: そのまま基板発注に使用可能
- BOM(部品表)・CPL(部品配置): JLCPCBのアセンブリサービスに対応
- サンプルスケッチ: すぐに動作確認できるテストプログラム
JLCPCBで基板を作成する場合は、Arduino_LED_Shield.zip を読み込ませるだけで発注できます。
完成品の購入
「自分で基板を発注するのは敷居が高い」という方向けに、完成品も販売しています。
セット内容:
- LED・抵抗が実装済みのシールド基板
- Arduino用スタッキングコネクタ
※注意: スタッキングコネクタは付属していますが、ハンダ付けは購入者様にてお願いいたします。
まとめ:デバッグを快適にする小さな工夫
電子工作を続けていると、「こういうのが欲しかったんだよな」と思う瞬間があります。今回作ったLEDシールドは、まさにそんな思いから生まれました。
このシールドがもたらす価値
- ⏱️ 時間の節約: 毎回の配線作業から解放
- 🔍 視認性の向上: 複数ピンの状態を一目で把握
- 🛠️ 柔軟性: 不要なLEDはカットで無効化可能
- 🔄 再利用性: 何度でも使える開発ツール
ただの出力確認用LEDと言ってしまえばそれまでですが、その「ただの部分」を一手間かけて形にすることで、日々の開発が楽しく、快適になっていきます。
手に馴染む道具を自分で作れるというのは、電子工作ならではの自由で創造的な喜びです。
それでは、良き電子工作ライフを!