「PC オシロって実用になるの?」──6年使って言えること

オシロスコープを買おうとすると、まずここで迷います。

「据え置きの本物じゃないと、ちゃんと測れないんじゃないの?」 「USB オシロって、結局おもちゃなんでしょ?」

結論から言うと、趣味の電子工作なら、2ch の USB オシロで十分測れます。 この記事の元になった実験記事の波形は、すべてこの OWON VDS3102L で撮ったものです。

仕事では据え置きの 4ch オシロ RIGOL DHO804 を使っています。そのうえで自宅の実験机には 2020 年 6 月から VDS3102L を置いています。両方を使い続けて感じた実際の差と、「据え置きのほうが多機能」がどこまで本当なのかを、OWON と RIGOL の公式仕様書を並べて確かめます。

OWON VDS3102L 本体。CH1/CH2 端子に T5100 プローブを 2 本接続した状態

VDS3102L 本体。手前が CH1/CH2 と MULTI 端子で、付属の T5100 プローブを 2 本接続した状態。奥の側面に COM/USB/LAN のポートが並ぶ

この記事でわかること

項目 内容
VDS3102L の実力 100MHz・1GS/s・8bit・10M メモリの「数字の意味」と、マイコンの信号で何が測れたか
USB オシロの利点 画面が PC・波形が png/csv でそのまま落ちる・机を占領しない
USB オシロの限界 2ch・シリアルデコード無し・Windows 専用・エッジ合わせはボタンのほうが楽
後継機との違い 販売終了の 3102L と現行 VDS6102 の差分を公式仕様で比較
据え置き機との違い 仕事で使っている RIGOL DHO804(4ch・12bit)と機能単位で比較。据え置きが勝つ項目と、USB が勝つ項目

📦 OWON VDS3102L の基本仕様

購入したもの

項目 内容
製品名 OWON VDS3102L(USB オシロスコープ・LAN 出力付・100MHz・2ch・1GS/s)
購入先 秋月電子通商(通販コード M-06919)
購入日 2020 年 6 月 18 日
購入価格 ¥34,500
現在の販売状況 秋月電子では販売終了商品ページは残っている)
🗓️ VDS3102L は販売終了品です

この記事のレビュー対象 VDS3102L は、秋月電子通商では販売が終了しています。同じ OWON の現行機で最もスペックが近いのは VDS6102 ですが、別の機種です(Type-C・信号源内蔵・macOS 対応など違いがあります)。差分は後半の比較表で公式仕様どおりに整理しています。

製品スペック(公式値)

項目 仕様
アナログ帯域 100MHz
チャンネル 2ch + MULTI 端子(外部トリガ入力/トリガ出力/Pass-Fail 出力。波形は映らない
サンプルレート(リアルタイム) 1ch 使用時 1GS/s/2ch 同時 500MS/s
立ち上がり時間 ≤3.5ns(typical)
記録長 最大 10M
垂直分解能 8bit(2ch 同時)
垂直感度 2mV/div〜5V/div(※1)
水平軸 2ns/div〜100s/div(1-2-5 ステップ)
入力 1MΩ‖10〜15pF・DC/AC/GND 結合・プローブ ×1/×10/×100/×1000 対応(※2)
最大入力電圧 40Vpp(DC+AC)(※3)
トリガ Edge/Pulse/Video(NTSC・PAL・SECAM)/Slope/Alternate。モード Auto/Normal/Single。ホールドオフ 100ns〜10s
取り込みモード Sample/Peak Detect/Average(1〜128 回)
自動測定 20 種(Vpp・Vmax・Vmin・Vtop・Vbase・Vamp・Vavg・Vrms・Overshoot・Preshoot・Freq・Period・Rise Time・Fall Time・Delay A→B ×2・+Width・−Width・+Duty・−Duty)。画面に同時 8 種/ch
演算 +・−・×・÷・反転・FFT(2048 点入力→1024 点・窓 4 種)
通信 USB 2.0・LAN(AC アダプタ給電時のみ)・SCPI・LabVIEW サンプル公式配布
電源 USB 5V または付属 AC アダプタ(仕様書 ≤5V/1.5A・≤6.5W)
対応 OS(公式記載) Windows XP/Vista/7/8/10(32/64bit)。手元では Windows 11 で使用中
サイズ・重量 190×120×18mm・0.3kg
付属品 パッシブプローブ T5100 ×2(100MHz・×1/×10 切替・1.2m)・プローブ調整ドライバ・USB ケーブル・AC アダプタ+電源コード・シリコンケース・クイックガイド・CD-ROM

※ 出典は OWON 公式の VDS シリーズ仕様書 PDF・VDS_S2 ヘルプ V1.3.5 の §IV・秋月電子配布のクイックガイド V1.03 です。公式資料どうし、あるいは公式資料と実機で値が割れている項目が 4 つあり、この記事では次のように扱っています。

  • ※1 垂直感度の下限:マニュアル §IV・製品ページ・クイックガイドは 2mV/div、仕様書 PDF だけ 5mV/div。多数側の 2mV/div を採りました。
  • ※2 入力容量:仕様書 PDF とクイックガイドは 10pF±5pF、マニュアル §IV は 15pF±5pF。両方を併記しています。
  • ※3 最大入力電圧:仕様書 PDF・クイックガイド・秋月電子配布の VDS シリーズ製品リーフレットの 3 つが 40Vpp で、マニュアル §IV だけ 400Vpp。安全に関わるので低いほうの 40Vpp を採っています。商用電源をプローブで直接当てるような使い方は、この機種ではしないでください。
  • ※4 プローブ ×1 時の帯域:マニュアルは「×1 にすると 5MHz に制限される」、手元の付属プローブ T5100 の刻印は「×1 で 6MHz」。本文では刻印の値を採っています。

後継相当の現行機(VDS6102)

VDS3102L は販売終了なので、これから買うなら現行の VDS6102 が対象になります。レビュー対象とは別機種で、違いは後半の差分表にまとめました。

Amazon で OWON VDS6102 を見る →

※本記事には Amazon アソシエイト等のアフィリエイトリンクを含みます。


✅ 据え置き型ではなく USB オシロを選んだ理由

買ったときに考えていたことは、そのまま書くとこうです。

パソコンで見られたら便利だろう、ブログに上げやすいだろう、というのが理由です。取り込みは本当に楽で、置き場所もコンパクトで済みます。ただ、モニターが無いのは慣れが必要かもしれません。据え置きのほうが実務では扱いやすいですが、趣味では 2ch でも十分だと思いました。

6 年経って、この見立ては変わっていません。順に説明します。

机の上を占領しない(190×120×18mm・0.3kg)

VDS3102L は 文庫本を 2 冊並べたくらいの面積で、厚さは 18mm です。使わないときは立てて収納できる寸法です。仕事で使っている据え置き機と並べると、この差は数字で見たほうが早いです。

機種 形態 サイズ(W×H×D) 重量
VDS3102L USB(PC 必須) 190×120×18mm 0.3kg
RIGOL DHO804 据え置き・7 インチ 1024×600 タッチ画面 265×162×77mm 1.78kg

※ DHO804 は RIGOL 公式データシートの機械仕様(265.35×161.75×77.38mm・1.78kg)。据え置き機の画面は本体に付いている画面のサイズで、VDS3102L の画面は「使っている PC のモニター」です。

実験机で、VDS3102L の手前に置いたブレッドボードの回路に T5100 プローブを 2 本当てているところ

実験机での使い方。本体の手前にブレッドボードを置き、トランジスタと電解コンデンサの回路にプローブを 2 本当てている。波形は PC の画面で見る

画面は PC のモニターをそのまま使える

据え置き機の画面は 7 インチ前後(DHO804 は 1024×600)ですが、USB オシロは PC のモニター全面が波形表示になります。2 本の波形を上下に離して置いても目盛りが読めますし、自動測定の数値も潰れません。

そして、ブログを書く側にとって決定的なのがこれです。

波形が png と csv でそのまま PC に落ちる

VDS-S2(PC ソフト)の Utility メニューには Save Image(png/bmp/gif)Pause&Export(bin/txt/csv/xls) があります。据え置き機のように USB メモリを挿して持ち帰る手間がなく、撮った波形はその瞬間に PC のフォルダに入っています。 当サイトの実験記事に貼っている波形画像は、すべてこの VDS-S2 の画面です。

VDS-S2 の画面をそのまま保存した png。2SC1815 のターンON波形

VDS-S2 の画面を png のまま貼った例(2SC1815 の実験記事より)。右下に時間軸 100ns/div・記録長 10k・サンプルレート 500MS/s、左下に各 ch の V/div、その上に自動測定の値が並ぶ。1920×1032px のフル画面がそのまま画像になっている

VDS-S2 の画面。CH1(黄)と CH2(赤)の 60Hz の波形と、右側に開いた Measure パネル

VDS-S2 の画面。10ms/div・10V/div で CH1(黄)と CH2(赤)に 60Hz の波形を出し、右の Measure パネルで自動測定の項目にチェックを入れたところ。選んだ Frequency/+DutyCycle/Vmax/Vmin の値は左下に ch ごとに並び、右下に時間軸・記録長 10k・サンプルレート 50KS/s が出る

ソフトは一瞬で立ち上がる

「USB オシロは PC を起動してソフトを立ち上げて……が面倒」と言われますが、実際はこうです。

ソフトの立ち上げや起動で手間ということはなく、一瞬で立ち上がります。

VDS-S2 は起動してすぐ波形が出ます。据え置き機の電源スイッチを入れる代わりに、アイコンをダブルクリックする——違いはそれだけです。


📐 「100MHz・1GS/s・8bit・10M」は何を意味するのか

オシロのカタログは 4 つの数字で語られます。VDS3102L の数字を例に、それぞれが「何を測れて、何を測れないか」を決めているのかを整理します。

帯域 100MHz = 立ち上がり 3.5ns がこの機種の下限

アナログ帯域は「正弦波の振幅が −3dB(約 71%)に落ちる周波数」です。オシロの立ち上がり時間はこの帯域からほぼ決まります。

t_r \approx \frac{0.35}{f_{-3\mathrm{dB}}} = \frac{0.35}{100\,\mathrm{MHz}} = 3.5\,\mathrm{ns}

仕様書の「立ち上がり時間 ≤3.5ns」はこの計算そのものです。オシロは自分の立ち上がり時間より速いエッジを、速いまま表示できません。 信号の立ち上がり時間とオシロの立ち上がり時間は二乗和で合成されるので、

t_{\mathrm{disp}} \approx \sqrt{t_{\mathrm{sig}}^2 + t_{\mathrm{scope}}^2}
本当の立ち上がり時間 画面に出る値 誤差
20ns 20.3ns +1.5%
10ns 10.6ns +6%
5ns 6.1ns +22%
3.5ns 4.9ns +41%

目安として、10ns 以上のエッジなら数 % の誤差で読める、それより速いエッジは「オシロの限界を見ている」と思ったほうが安全です。方形波を形のまま信じるなら、5 次高調波が帯域に収まる 20MHz 程度までが目安になります。2SC1815 のターン ON(数十 ns)を見るには十分な帯域です。

1GS/s は 1ch のときの数字(2ch 同時は 500MS/s)

カタログの「1GS/s」は、チャンネルを 1 本だけ使ったときの値です。マニュアル §IV には「Dual CH 500MS/s/Single CH 1GS/s」と明記されています。上に貼った 2SC1815 の画面でも、右下の表示は「S (500MS/s)」——2ch 同時に使っているからです。

使い方 サンプルレート サンプル間隔
CH1 だけ ON 1GS/s 1ns
CH1・CH2 両方 ON 500MS/s 2ns

2 点間の時間差を測るときの分解能はサンプル間隔で決まるので、2ch 同時のときは 2ns 刻みです。1 本だけ見たい項目は、もう片方の ch を OFF にしてから撮るのが定石です。

📌 覚えておくこと

2ch オシロの最大サンプルレートは「ch を 1 本 OFF にしたときの値」で書かれていることが多いです。VDS3102L も、後述する VDS6102 も、仕事の RIGOL DHO804(1ch 1.25GSa/s → 2ch 625MSa/s → 4ch 312.5MSa/s)も同じ書き方です。カタログの最大値だけで比べると見誤ります。

メモリ 10M = 「細かく」と「長く」を両立できる幅

記録長(メモリ)は、1 回の取り込みで何サンプル貯められるかです。取り込める時間はサンプルレートで割った値になります。

T_{\mathrm{capture}} = \frac{N_{\mathrm{record}}}{f_s}
記録長の設定 500MS/s(2ch)で撮れる時間 1GS/s(1ch)で撮れる時間
10k 20µs 10µs
100k 200µs 100µs
1M 2ms 1ms
10M 20ms 10ms

メモリが少ないオシロは、時間軸を長くした瞬間にサンプルレートを落として辻褄を合わせます。10M あれば、サーボの PWM 周期 20ms を 1 画面に入れながら、パルスの立ち上がりを 2ns 刻みで拡大して見ることができます。この「2ch 同時で 10M」は、後述する DHO804 の 2ch モード(10Mpts)と同じ深さです。

実験記事の画面はどれも記録長 10k(右下の「D 10k」)で撮っています。ns のエッジと ms の周期を 1 回の取り込みで両方見たいときだけ、Capture&period ウィンドウで記録長を増やせば足ります。

8bit = 縦は 256 段階。V/div を詰めないと読めない

垂直分解能 8bit は、画面の縦方向を 256 段階に刻むという意味です。5V の信号を見るために 2V/div にしていると、1 段階の刻みは数十 mV になります。その状態で数十 mV の信号を同じ画面に出そうとしても、階段状になるかノイズに沈むかのどちらかです。

対策は単純で、見たい信号に合わせて V/div を詰めること。2SC1815 の増幅回路の実験では、出力 1V/div の画面から 50mV/div へ 20 倍拡大して、ようやくバイパスコンデンサを外したときの小さな出力が読めました。

もうひとつ、×10 プローブを付けると表示上の最小感度は 20mV/divになります(本体の 2mV/div × 10)。2SC1815 の記事で「垂直感度の下限が 20mV/div」と書いたのはこの状態です。プローブを ×1 に切り替えれば 2mV/div まで下がりますが、次の項の理由でおすすめしません。

8bit と 12bit の違い:同じ V/div で 16 倍細かく刻める

仕事で使っている RIGOL DHO804 は 12bit です。8bit が 256 段階なのに対して 12bit は 4096 段階、つまり同じ V/div 設定で 1 段階の刻みが 16 分の 1 になります。DHO804 のデータシートは「ダイナミックレンジ ±4div(12bit)」なので、画面の縦 8 目盛りを 4096 段階に割った値が 1 段階です。

V/div の設定 縦 8 目盛りぶんの電圧 8bit の 1 段階 12bit の 1 段階
2V/div 16V 62.5mV 3.9mV
1V/div 8V 31mV 2mV
100mV/div 800mV 3.1mV 0.2mV

※ 縦 8 目盛りを ADC のフルスケールとした計算例です。DHO804 はデータシートに「±4div(12bit)」とあるのでこのとおり、VDS3102L は画面が縦 10 目盛りで、ADC のフルスケールが何目盛りに当たるかは公式資料に記載がありません。

効いてくるのは、大きい信号に乗った小さい変化を、V/div を変えずに読みたいときです。3.3V の電源ラインに乗る数十 mV のリップル、5V の矩形波の上に乗るリンギングの高さ——8bit では 1V/div のまま読むと数段階しか変化しませんが、12bit なら数十段階で見えます。8bit の VDS3102L では、前の項のとおり V/div を詰めて信号を画面いっぱいに広げる操作で補います。

ただし、12bit は「分解能」であって「確度」ではありません。DHO804 の DC ゲイン確度は ±1%(5mV/div より上)で、8bit 機の ±3% より良いものの、4096 段階のうち有効なのはノイズと確度で決まる範囲です。「12bit=16 倍正確」ではなく「16 倍細かく刻める」と読むのが正しい理解です。

プローブは必ず ×10。×1 だと帯域が 6MHz に落ちる

付属のプローブは T5100 で、本体の刻印はこうです。

切替 帯域 最大電圧(プローブ側の定格)
×10 100MHz 600Vpk
×1 6MHz 200Vpk

100MHz の本体を買っても、プローブのスイッチが ×1 のままでは 6MHz のオシロです(マニュアルの「How to Use the Probe」は 5MHz と書いていて、刻印とは 1MHz ずれています。本文は刻印の値を採ります)。小さい信号を読みたいとき以外は ×10 に固定し、VDS-S2 側の Probe Rate も 10 に合わせておきます(合っていないと電圧が 10 倍ずれて表示されます)。

⚠️ 600Vpk はプローブの定格であって、本体の定格ではない

刻印の 600Vpk/200Vpk はプローブ単体が耐える電圧です。本体の BNC に入る電圧の定格は前述のとおり 40Vpp と思って扱うのが安全で、プローブが 600V まで耐えても本体側の定格を超えて使えるわけではありません。×10 プローブは先端の電圧を 1/10 にして BNC に渡すので、本体定格 40Vpp のときに先端で扱える電圧は計算上 400Vpp までです。

OWON の公式サイトには T5100 単体の仕様ページが見当たらなかったので、入力容量や補償範囲はここには書きません。


🔬 実際にこれで何を測ってきたか

測ることが多いのはマイコンの信号です。GPIO の矩形波、PWM、タイマー IC の出力、トランジスタで受けた側の波形——そういう 3.3V/5V 系の信号が中心なので、スペックの話より実験で何が撮れたかのほうが伝わると思います。当サイトの実験記事から 3 つ引きます。すべて VDS3102L と VDS-S2 の画面です。

NE555 のデューティ比を自動測定で読む

VDS-S2 の画面。NE555N の出力波形と自動測定 +DutyCycle 66.62%

50ms/div・2V/div。左下に自動測定 +DutyCycle=66.62%、CH1 の欄に周波数 5.083Hz(NE555N の記事より)

設計値 66.7% に対して実測 66.62%。自動測定を +DutyCycle と Freq の 2 つだけ出しておけば、抵抗やコンデンサを差し替えるたびに数字が更新されるので、部品定数の追い込みが画面を見ながらできます。

2SC1815 のターン ON/OFF を ns 単位で見る

VDS-S2 の画面。2SC1815 のターンOFF波形。駆動信号が落ちてからコレクタが上がるまで遅れがある

1µs/div。CH1(赤)が 0V に落ちてから CH2(黄・コレクタ)が上がり始めるまで 1 目盛り以上の間がある(2SC1815 の記事より)

トランジスタをスイッチとして使ったときの「OFF が ON より遅い」現象(蓄積時間)を、1µs/div と 100ns/div で撮り分けた実験です。カーソルで読んだ蓄積時間が約 1.3µs、切り替わり自体は 0.15µs。2ch 同時・500MS/s(2ns 刻み)で十分に読める速さでした。この記事は 8 枚の波形をすべてこのオシロで撮っていて、当サイトでいちばん VDS3102L を酷使した記事です。

サーボの PWM が本当に 20ms 周期か確かめる

VDS-S2 の画面。SG90 サーボへの PWM 信号。2ms/div で 20ms 周期のパルスが見える

2ms/div。20ms 周期(50Hz)のパルスが 2 発。左下の CH1 欄に周波数 50.048Hz(サーボモータの記事より)

Servo.h が本当に 50Hz を出しているか、パルス幅が 0.5〜2.4ms のどこにあるかを見た実験です。安価なサーボは個体差があるので、波形を見ながら「どこまで回せるか」を決めるのに使いました。


💻 PC オシロならではの利点

波形は png、数値は csv でそのまま落ちる

前述のとおり、Save Image で png/bmp/gif、Pause&Export で bin/txt/csv/xls が PC のフォルダに直接保存されます。csv で書き出した波形は Excel や Python でそのまま解析できます。据え置き機で同じことをするには USB メモリを介するか、LAN 経由で PC から取り込む必要があります(DHO804 は png/bmp/jpg と csv/bin を USB メモリか内蔵 8GB に保存し、LAN の Web Control で PC のブラウザから操作できる仕様です)。

スクショが記事にそのまま使える

2SC1815 の記事の波形画像は、VDS-S2 の画面を 1920×1032px の png でそのまま保存したものです。据え置き機の画面をスマホで撮るとモアレや反射が入りますが、PC オシロにはその問題がありません。自動測定の値やカーソルの読みも画像に残るので、記事に貼るだけで測定条件が伝わります。

Three View:YT・XY・FFT を同時表示

Math で FFT を有効にするか、Display で XY Mode を有効にすると、画面が Three View(左上に XY、右上に FFT、下に通常の時間波形)に切り替わります。FFT 画面でも周波数と振幅のカーソルが使えるので、発振回路のスプリアスやスイッチング電源のリップル周波数を、時間波形を見ながら確認できます。

参照波形 8 個・Pass/Fail・波形レコード

  • Save/Refer:波形を 8 個まで保存して、現在の波形に重ねて表示できる。部品を差し替える前後の比較に使う
  • Pass/Fail:マスクを作って、外れたら MULTI 端子から Fail 信号を出す
  • Record:フレーム間隔を決めて連続記録(.cap・最大 4000M)し、あとから再生する

趣味の用途で Pass/Fail や Record を使う場面は多くありませんが、「据え置きにしかない機能」と思われがちなものが、実は入っています。

AC アダプタが付くので USB の電流不足を気にしなくていい

VDS3102L は LAN 付きモデルなので AC アダプタと電源コードが同梱されています(仕様書の注記:LAN 付きモデルのみ付属)。電源仕様は仕様書 PDF が ≤5V/1.5A、クイックガイドが 5V/1A で、どちらも USB 2.0 ポートの規格値 500mA を超えています。クイックガイドには「PC の USB または AC アダプタで給電」とあるので USB 給電でも動きますが、波形が不安定になったらまず AC アダプタに切り替えるのが確実です。


⚠️ 弱点と、買う前に知っておくこと

不満点を聞かれたときの答えは、正直こうです。

困った不満点はありませんが、エッジ検出で合わせるときなど、ソフトよりはボタンのほうがやりやすいとは思います。

「困っていない」のは本当ですが、買う前に知っておいたほうがいいことは 7 つあります。

PC が要る。モニターが無いのは慣れが要る

電源を入れれば波形が出る据え置き機と違って、PC と USB ケーブルとソフトが揃って初めて動きます。実験机に PC が常駐している人には問題になりませんが、基板の前に PC を持ってくる必要がある場面(大きな装置の側で測る、屋外で測る)では据え置き機や携帯型のほうが楽です。

エッジ合わせは、つまみとボタンのほうが速い

据え置き機はトリガレベルのつまみを回して、「Set to 50%」ボタンを押せば終わります。VDS-S2 では、トリガの電圧値をクリックしてスライダーを出すか、画面右端のトリガマーカーをマウスで掴んで動かします(マニュアル「How to Set the Trigger System」)。慣れれば困りませんが、ボタンやつまみで合わせるほうがやりやすい、というのが 6 年使った実感です。

Windows 専用(公式は 10 まで記載)

VDS-S2 ヘルプ V1.3.5 の動作環境は Windows XP/Vista/7/8/10(32/64bit) で、macOS・Linux の記載はありません。公式の記載は 10 までですが、手元では Windows 11 で使っています。 後継の VDS6102 は公式に Windows 11 と macOS 10.13〜10.15 が動作環境に入り、macOS 版ソフトも配布されているので、Mac の人はそちらです。

もうひとつ、VDS-S2 に日本語表示はありません(英語 UI)。メニューは Measure/Cursor/Math/Utility といった単語だけなので困る場面はありませんが、日本語表示の据え置き機に慣れている人は知っておいてください。

シリアルデコード(I2C/SPI/UART)が無い

仕様書 PDF にもマニュアル全文にも「decode」の語は 1 件も出てきません。I2C の波形を撮ることはできても、アドレスやデータを 16 進で読んでくれる機能は無いということです。仕事の DHO804 には Parallel/RS232-UART/I2C/SPI/CAN のデコードが標準で付いていて、4 種類を同時に有効にできます。マイコン相手の実験では、家と仕事でいちばん差を感じるのがここです。

I2C や SPI の中身まで読みたい場面が出てきたので、ロジックアナライザは別に用意することにしました。 こちらは別記事で扱います。オシロ側は「電気的にまともな波形が出ているか」を見る役、ロジアナ側は「中身のバイト列が合っているか」を見る役、という分担です。

2ch しかない(MULTI 端子はトリガ専用)

仕様書の「2 + 1 (multi)」の +1 は、外部トリガ入力/トリガ出力/Pass-Fail 出力を兼ねる MULTI 端子のことで、波形を映せる 3 本目のチャンネルではありません。仕事で 4ch を使っている立場から言うと、

仕事では据え置き 4ch を使っていますが、ch が多いほうが痒い所に手が届きます。

SPI なら SCK と MOSI と MISO と CS を一度に見たい。2ch だと「SCK+MOSI」「SCK+MISO」の 2 回に分けて撮ることになります。DHO804 なら 4 本を同時に出せます(ただし 4ch 全部 ON だとサンプルレートは 312.5MSa/s、メモリは 5Mpts に下がります)。趣味の実験では 2 回に分ければ済みますが、タイミングの前後関係を 3 本以上で同時に見たいなら、4ch 機かロジアナが要ります。

LAN で使うなら AC アダプタ給電に切り替える

マニュアル「Use LAN Port」の手順は、USB でいったん繋いで IP を設定したあと、USB ケーブルを抜いて AC アダプタで給電し直し、LAN ケーブルを挿すというものです。USB と LAN を同時に使う構成ではありません。

LAN は使ったことがありません。

実験机では USB で足りているので、LAN 機能は 6 年間出番がありませんでした。装置から離れた場所で波形を見たい人向けの機能です。

最大入力電圧は 40Vpp と思って扱う

前述のとおり資料によって 40Vpp(仕様書・クイックガイド・秋月配布リーフレット)と 400Vpp(マニュアル §IV のみ)で割れているので、低いほうの 40Vpp を上限として扱っています。3.3V/5V のマイコン回路や 12V 程度の電源回路では問題になりませんが、商用電源やモーター駆動の逆起電力のような高い電圧は、この機種で直接当てる前提にしないでください。DHO804 の最大入力は CAT I 300Vrms/400Vpk で、桁が違います。


🆚 後継機 VDS6102 と、据え置き機 RIGOL DHO804 との比較

「据え置きのほうが多機能だと思う」——自分でもそう感じていたので、公式仕様書を並べて機能単位で確かめました。比較するのは 2 台です。ひとつは VDS3102L の後継相当にあたる現行の OWON VDS6102、もうひとつは仕事で使っている据え置き 4ch の RIGOL DHO804 です。DHO804 は職場の機材で、家で使っているわけではないことは先に断っておきます。

後継相当の VDS6102 との差分(公式仕様)

Amazon の商品名に「2+1(信号源)」とあるとおり、6102 の +1 は 3102L と意味が違います。3102L の MULTI 端子はトリガ入出力ですが、6102 の MULTI 端子は内蔵ファンクションジェネレータの出力です(VDS6000 マニュアル「Communication Interface Introduction」「how to set built-in function generator」)。

項目 VDS3102L(レビュー機) VDS6102(現行)
帯域/分解能 100MHz/8bit 100MHz/8bit(6102A は 8/12/14bit 切替)
サンプルレート 1ch 1GS/s/2ch 500MS/s 同じ
立ち上がり時間 ≤3.5ns ≤3.5ns
記録長 10M 10M
垂直感度 2mV/div〜5V/div 2mV/div〜5V/div
最大入力電圧 40Vpp(低いほうを採用) 40V(DC+AC peak)
水平軸 2ns/div〜100s/div 仕様書は 5ns/div〜・マニュアルは 2ns/div〜(公式内で割れ)
時間軸確度 ±100ppm ±25ppm
帯域制限 記載なし 20MHz 制限あり
トリガ種別 Edge/Pulse/Video/Slope/Alternate Edge/Video/Slope/Pulse(Alternate の記載なし)
周波数カウンタ 記載なし 6 桁カウンタ内蔵
「+1」の中身(MULTI 端子) 外部トリガ入力/トリガ出力/Pass-Fail 出力 信号源出力:正弦波 0.1Hz〜5MHz・方形波〜200kHz・ランプ/パルス〜10kHz、10mVpp〜5Vpp、出力 50Ω、10bit・25MS/s
PC 接続 USB 2.0(付属ケーブル) USB Type-C(device)+ USB host(Wi-Fi モジュール用)
LAN L モデルのみ・AC アダプタ給電時 標準装備(10/100)
Wi-Fi なし オプションモジュール
制御 SCPI・LabVIEW サンプル公式配布 SCPI(USBTMC/LXI/SOCKET)・公式の二次開発資料に LabVIEW サンプル同梱
シリアルデコード なし なし(マニュアルに記載なし)
対応 OS(公式) Windows XP〜10(手元では 11 で動作) Windows XP〜11・macOS 10.13〜10.15(macOS 版ソフト配布あり)
電源 ≤5V/1.5A・≤6.5W 5〜15VDC/1.2A・≤8W(USB 給電時は 1.5A 以上のポートが必要)
サイズ・重量 190×120×18mm・0.3kg 190×120×18mm・0.38kg
付属品 プローブ T5100 ×2・USB・AC アダプタ・シリコンケース・CD プローブ 2 本・USB-C ケーブル・AC アダプタ・BNC ケーブル・クイックガイド・CD

※ 3102L は VDS シリーズ仕様書 PDF・VDS_S2 ヘルプ V1.3.5・クイックガイド V1.03、6102 は VDS6000 シリーズ仕様書 V1.0 と VDS6000 2CH ユーザーマニュアルから転記。Amazon の商品名(SCPI・LabVIEW 対応)は公式資料と一致しています。

オシロとしての性能は同じで、信号源・Type-C・LAN 標準・Win11/macOS 対応が足された機種、というのが公式資料から読める差です。デコードが無い点は変わっていません。

仕事で使っている据え置き機 RIGOL DHO804 との機能比較

DHO804 は 70MHz・4ch・12bit・1.25GSa/s・25Mpts の据え置き機です。値は RIGOL 公式の DHO800 シリーズデータシートから転記しました(Amazon の商品名にある数字とも一致しています)。

Amazon で RIGOL DHO804 を見る →

項目 VDS3102L(USB・2ch・8bit) RIGOL DHO804(据え置き・4ch・12bit)
画面・操作系 PC のモニター。マウスとキーボード(Ctrl+Enter で Autoset) 7 インチ 1024×600 静電容量タッチ+つまみ・ボタン。HDMI 出力あり
アナログ ch 2(+MULTI トリガ端子) 4
帯域 100MHz 70MHz
立ち上がり時間 ≤3.5ns ≤5ns
ADC 分解能 8bit 12bit
サンプルレート 1ch 1GS/s/2ch 500MS/s 1ch 1.25GSa/s/2ch 625MSa/s/3〜4ch 312.5MSa/s
記録長 10M 1ch 25Mpts/2ch 10Mpts/3〜4ch 5Mpts
波形取り込みレート 記載なし 30,000 wfms/s(Vector)/1,000,000 wfms/s(UltraAcquire)
垂直感度 2mV/div〜5V/div 500µV/div〜10V/div
最大入力電圧 40Vpp CAT I 300Vrms/400Vpk
トリガ種別 Edge/Pulse/Video/Slope/Alternate(5 種) Edge/Pulse/Slope/Video/Pattern/Duration/Timeout/Runt/Window/Delay/Setup-Hold/Nth Edge/RS232-UART/I2C/SPI/CAN(16 種)
自動測定 20 種(同時 8 種) 41 種(同時 10 種)+ヒストグラム・統計
シリアルデコード なし 標準:Parallel/RS232-UART/I2C/SPI/CAN(4 つ同時)
演算 +−×÷・反転・FFT(2048 点・窓 4 種) 4 系統同時:四則・論理・積分・微分・平方根・対数・フィルタ 4 種・FFT(最大 1Mpts・窓 6 種・ピークサーチ)
波形の検索・記録 波形レコード(.cap) 検索&ナビゲーション、セグメント記録 500,000 フレーム
Pass/Fail あり(MULTI 出力) あり(AUX OUT 出力・ビープ・自動スクショ)
DVM・周波数カウンタ 記載なし 3 桁 DVM・3〜6 桁カウンタ・48bit トータライザ
画面・データの保存 PC のフォルダに直接(png/bmp/gif・bin/txt/csv/xls) USB メモリ・内蔵 8GB(png/bmp/jpg・csv/bin)。参照波形 10
通信 USB 2.0・LAN(AC 給電時のみ) USB host/device・LAN(LXI-C・Web Control)・HDMI
付属プローブ T5100(100MHz)×2 PVP3150(150MHz)×4
電源 USB 5V または AC アダプタ Type-C DC15V/3A・最大 45W
サイズ・重量 190×120×18mm・0.3kg 265×162×77mm・1.78kg
OS Windows(PC 側) Android(本体内蔵・Cortex-A72 6 コア)

※ DHO804 の値は RIGOL「DHO800 Series Data Sheet」の Overview/Trigger System/Waveform Measurement/Serial Decoding/I/O/Mechanical の各節から転記。「1ch/2ch/3〜4ch」は同データシートの single-channel/dual-channel/full-channel の定義に従っています。

表から読めることを 3 つにまとめます。

  1. 「据え置きのほうが多機能」は本当。ただし勝つのは機能の数で、帯域ではない。 DHO804 が上回るのは、4ch・12bit・16 種のトリガ・41 種の自動測定・標準デコード・4 系統の演算・100 万 wfms/s の取り込み・検索ナビ・DVM とカウンタ。仕事で「痒い所に手が届く」のは、この項目群です。一方で帯域は VDS3102L の 100MHz に対して DHO804 は 70MHz、立ち上がり時間も 3.5ns 対 5ns で、速いエッジを見る性能は USB オシロのほうが上です。
  2. 2ch で使うかぎり、サンプルレートとメモリはほぼ互角。 VDS3102L の 2ch 同時 500MS/s・10M に対して、DHO804 の 2ch モードは 625MSa/s・10Mpts。4ch 全部 ON にすると DHO804 は 312.5MSa/s・5Mpts に下がるので、「4ch だから常に速い」わけではありません。
  3. USB オシロが一貫して勝つのは「保存」と「置き場所」。 画面もデータも PC のフォルダに直接落ちるのは VDS3102L だけで、DHO804 は USB メモリか LAN 経由です。本体は 0.3kg 対 1.78kg。

つまみでエッジを合わせる速さと、4ch・デコードが「据え置きの実感としての利点」で、USB オシロは帯域・保存・置き場所で返している、という関係です。

どれを選ぶか(フローチャート)

flowchart TD A["オシロスコープを選ぶ"] --> B{"実験机に PC が常駐している?
波形を PC に残したい?"} B -->|"はい"| C{"信号源も欲しい?
Type-C や macOS で使いたい?"} C -->|"はい"| D["VDS6102(現行・USB)"] C -->|"いいえ"| E["VDS3102L(販売終了・中古のみ)"] B -->|"いいえ・つまみで操作したい"| F{"シリアルデコードや
3ch 以上の同時観測が要る?"} F -->|"はい"| G["据え置き 4ch・デコード付き
(仕事では RIGOL DHO804)"] F -->|"いいえ"| H["据え置き 2ch でも足りる"]

図が表示されない場合の要約は次のとおりです。

  • PC が常駐・波形を PC に残したい → USB オシロ。信号源・Type-C・macOS が要るなら VDS6102、無くていいなら中古の VDS3102L
  • つまみで操作したい・PC を持ち込めない → 据え置き。デコードや 3ch 以上の同時観測が要るなら 4ch・デコード付き(仕事では RIGOL DHO804)、要らないなら 2ch 機でも足りる

🧑‍🔧 こんな人に向く/向かない

VDS3102L(USB オシロ)が向いている人

  • 実験机に PC が常にある
  • 波形を記事・レポート・SNS に貼る。csv で解析する
  • 測るものは 3.3V/5V のマイコン回路・アナログ回路・電源リップルが中心
  • 2ch で足りる(I2C なら SDA/SCL でちょうど 2ch)
  • 机が狭い。使わないときは本棚にしまいたい

据え置き機のほうがいい人

  • 電源を入れてすぐ波形を出したい。PC を立ち上げたくない
  • トリガレベルやカーソルをつまみで合わせたい
  • 3 本以上の信号のタイミングを同時に見る(SPI・パラレルバス・モータードライバ)
  • I2C/SPI/UART の中身をデコードして読みたい
  • 100V 系や高電圧を扱う(DHO804 のように最大入力電圧が 400Vpk クラスの機種を選ぶ)

❓ よくある質問(FAQ)

Q. VDS3102L は今でも買えますか?

A. 秋月電子通商では販売終了です(2020 年 6 月に ¥34,500 で購入しました)。新品で買うなら同じ OWON の現行機 VDS6102 が最も近いスペックですが、別機種です。オシロとしての性能(100MHz・1GS/s・10M)は同じで、信号源内蔵・Type-C・LAN 標準・Windows 11/macOS 対応が足されています。差分は本文の比較表にまとめています。

Q. 「1GS/s」なのに画面に 500MS/s と出ます。故障ですか?

A. 故障ではありません。VDS3102L の 1GS/s は 1ch だけ使ったときの値で、2ch 同時では 500MS/s に落ちます(マニュアル §IV に明記)。1 本だけ見たいときは、もう片方の ch を OFF にすると 1GS/s に戻ります。

Q. USB オシロはノート PC の USB から給電できますか?

A. 公式クイックガイドには「PC の USB または AC アダプタで給電」とあります。ただし電源仕様(仕様書 ≤5V/1.5A・クイックガイド 5V/1A)は USB 2.0 の規格値 500mA を超えているので、波形が不安定になったら付属の AC アダプタに切り替えてください。LAN で使うときは AC アダプタ給電が必須です。

Q. I2C や SPI の通信内容は読めますか?

A. 読めません。VDS3102L にはシリアルデコード機能が無く、公式資料にも記載がありません。波形として電圧レベルやタイミングを見ることはできますが、バイト列を 16 進で表示するにはデコード対応のオシロ(仕事で使っている RIGOL DHO804 は標準で Parallel/RS232-UART/I2C/SPI/CAN に対応)かロジックアナライザが必要です。私はロジックアナライザを別に用意することにしました。

Q. プローブは ×1 と ×10 のどちらで使えばいいですか?

A. ×10 です。付属プローブ T5100 の刻印は ×10 で 100MHz、×1 で 6MHz(公式マニュアルは 5MHz と記載)。×1 のままでは 100MHz の本体が 6MHz のオシロになります。×10 に固定して、ソフト側の Probe Rate も 10 に合わせてください。表示上の最小感度は 20mV/div(本体 2mV/div × 10)になります。

Q. 据え置きのオシロと比べて、何が劣りますか?

A. 仕事で使っている RIGOL DHO804(4ch・12bit)と比べると、チャンネル数(2 対 4)、ADC 分解能(8bit 対 12bit)、トリガ種別(5 種対 16 種)、自動測定(20 種対 41 種)、シリアルデコード(無し対標準)、つまみでの操作性で劣ります。一方で帯域は 100MHz 対 70MHz で VDS3102L が上、2ch で使うかぎりサンプルレートとメモリはほぼ互角、画面とデータが PC に直接落ちる点と 0.3kg の本体は USB オシロの利点です。本文の比較表で項目ごとに確認できます。

Q. Windows 11 で動きますか?

A. 手元では Windows 11 で使っています。公式ヘルプ V1.3.5 の動作環境は Windows XP〜10 で 11 の記載はありませんが、実機では動いています。なお VDS-S2 の表示は英語のみで、日本語表示はありません。後継の VDS6102 は公式に Windows 11 と macOS が動作環境に入っています。


✅ まとめ

OWON VDS3102L は、趣味の電子工作に必要な測定を 2ch・100MHz で十分にこなし、波形を PC に直接残せる USB オシロです。

この記事のポイント

  1. 1GS/s は 1ch のときの値。 2ch 同時は 500MS/s(2ns 刻み)。それでも 2SC1815 のスイッチング(数十 ns〜µs)は十分読めた
  2. 記録長 10M で「20ms の周期」と「ns のエッジ」を 1 回の取り込みで両立できる。DHO804 の 2ch モード(10Mpts)と同じ深さ
  3. 画面も csv も PC のフォルダに直接落ちる。 実験記事の波形画像はすべて VDS-S2 の Save Image そのまま
  4. 弱点は 2ch・デコード無し・Windows 専用(英語 UI・手元では 11 で動作)・エッジ合わせがマウス。 デコードが必要になったのでロジックアナライザを別に用意した
  5. 「据え置きのほうが多機能」は本当。ただし勝つのは機能の数。 仕事の RIGOL DHO804 は 4ch・12bit・16 種トリガ・標準デコードで上回るが、帯域は 100MHz 対 70MHz で USB オシロが上、2ch ならサンプルレートとメモリはほぼ互角
  6. 販売終了。 現行で最も近いのは VDS6102(別機種。信号源・Type-C・Win11/macOS 対応が追加、オシロ性能は同じ)

仕事では据え置き 4ch、自宅では USB 2ch。「据え置きのほうが実務では扱いやすいが、趣味では 2ch でも十分」——買ったときの見立てどおりでした。


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